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小林淳一
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星川洋助
いちばん相米さんらしさが、相米さんのやりたいことが
充満しているんだろうなあと思いました
ユーロスペースにて10月21日(土)より再公開がスタートする「台風クラブ 4Kレストア版」。10月11日に黒沢清監督を招いてのトーク・イベントが行われた。
――「4K版」をごらんになって、いかがですか。
「こんなに綺麗というか、いろいろなところがよく見える映画だったのか、というところが驚きではありましたね。台風が来るというところが基本的に夜だというところもあるんですが、ぼんやりした中で蛍光灯の灯りが緑色に光っていて、雨が降る中で、中学生が無茶苦茶やっているわけですよね。見えないような、見えるような。ごまかされてるような、これが真実のような。全部が朧気な印象が昔はありました。今回見直して思ったのは、普通の学園生活はちゃんと見えるようにできているんだと」
――「台風クラブ」は黒沢監督が参加されていたディレクターズ・カンパニーのシナリオ公募作品です。黒沢さんも（制作がしたいと）手を挙げたと伝えられています。
「手を挙げたというか。そうですね、やるなら、これだとは思いました。いちばん面白かったのがこの脚本だったのは覚えています。評価の高い脚本ではありました。これを実際に撮るかというと、なかなか大変だよなあとぼんやり思っていたんですけど、いつの間にか相米さんが撮ることになっていましたね。相米さんもこれが面白いと言っていたのは知っていたのですが。自分から積極的に動いたのか、プロデューサーが「面白いというなら撮れよ」と言ってうながされて撮ったのか、そのへんはよくわかりません」
――相米映画の中ではどういう位置づけになりますか。
「映画として無茶苦茶なものは他にもいっぱいあると思うんですよ。相米さんの映画の無茶苦茶さが気持ちいいのは、本来だったらこうすべきというところを全然そうしない。普通アップにすると思ったらしない、アイドル映画ならこうするだろうというところをしない。企画として“あるジャンル”と言いますか、原作があったり、普通ならこうします、というのを完全に壊すから気持ちがいいんです。『台風クラブ』はもともとああいう企画（ホン）ではあった。原作モノやアイドル映画ではなかった。最初からこういう映画になるべくして誕生し、なっていったという映画です。ある意味でいちばん相米さんらしさが、相米さんのやりたいことが充満しているんだろうなあと思った」
――書籍「作家主義 相米慎二2023 台風クラブ」の中での黒沢さんのインタビューで、相米さんの長回しをテオ・アンゲロプロスやエドワード・ヤンに例えられていますが、それはどういうことなのでしょうか。
「スペクタクルといっていいと思います。カメラを長く回すというのはいろいろなやり方があります。勝手に推測してるんですけど、相米さんがなんであんなにワンカット長く回すのって、直接の影響を受けたのは神代辰巳さんなのかなとは思います。大多数の監督は途切れることのない演技を引き出すために長く回すんですね。私もそれはわかるんです。相米さんも一見そうしているように見えるけれど、全然そうじゃないですね。俳優の力は出てくるんですが、だったらもっとアップを撮ればいい。見せたいものがいっぱいあるんでしょう。そこで起こっていることをある程度客観的な視点で、この状況どうなっていくの？というのをじぃーと見させる力、これを映画のスペクタルと私は呼んでいるんですけど。映っている人間が何を考えているのか関係ない。起こっていることがどう推移していくのか、一分後どうなっているのかということを目を皿のようにして見るしかない。相米さんは明らかにそれを狙ってやっていると思いました」
台風クラブ 4Kレストア版
監督：相米慎二
出演：三上祐一／紅林茂／松永敏行／工藤夕貴／大西結花／三浦友和
（1985年／115分）
(C)ディレクターズ・カンパニー
製作：ディレクターズ・カンパニー
提供：中央映画貿易／ダブル・フィールド
配給：A PEOPLE CINEMA
2023年10月21日(土)よりユーロスペース、11月10日(金)よりアップリンク吉祥寺にてロードショー
作家主義 相米慎二2023 台風クラブ シナリオ完全採録
発売日：2023年9月9日(土)、アマゾンほか一部書店にて発売
＊SHIBUYA TSUTAYA（4F・6F）、A PEOPLE SHOPにて8月29日(火)より先行販売
定価：2,200円（税込）
発行：A PEOPLE
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