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A PEOPLE CINEMA

第2回 俳優映画祭
「ションベン・ライダー」

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小林淳一


“喪失のプロセス”“スペクタクル”としての
相米慎二映画

11月26日(日)・28日(火)開催される「第2回俳優映画祭」。第一夜<11月26日(日)>に上映されるのは相米慎二監督の「ションベン・ライダー」。トークライブには、本作品の助監督で、映画監督の榎戸耕史が登壇する。

ユーロスペースで行われた「台風クラブ 4Kレストア版」のトーク・ライブ。登壇した黒沢清監督に聞いた。「相米慎二監督作品でいちばん好きな作品は何ですか?」。黒沢監督は即答した。「『ションベン・ライダー』ですかね。『雪の断章―情熱―』もかなりのことをやってるんですが、やはり『ションベン・ライダー』が凄い」

現在、「ションベン・ライダー」は「台風クラブ」と共に全米で公開中だ。この2作品を買い付けたシネマ・ギルドのエドワード・マッカリー氏に話を聞いたことがある。彼は「台風」ではなく、「ションベン」に大きな衝撃を受け、相米慎二を“発見”した。「こんな日本人監督が1980年代の日本映画シーンにいたのか!」と、アメリカでの紹介を決意した。そのエドワードが制作したのが以下の「ションベン・ライダー」アメリカ版予告編である。

https://www.youtube.com/watch?v=UuEnHCD3aHQ

冒頭に藤竜也。まるで、ジャンリュック・ゴダールを思わせるような編集。河合美智子による主題歌「わたし・多感な頃」を全編につかうそのセンスに驚かされる。

相米慎二監督の本に何冊か関わらせていただいて「相米監督の作品で好きな映画」ということをスタッフやウォッチャーに多く聞いてきた。印象としては、前期(80年代)のマスターピースが「台風クラブ」で、後期(90年代)の代表作が「お引越し」ということになるだろう。奇しくも両作とも国際評価の高まりとともに昨年今年と「4K化」されている。

そんな中、前述の黒沢監督やエドワード氏ら、多くの熱狂的なファンをもつのが「ションベン・ライダー」である。「ションベン・ライダー」には幻の“3時間”とも“4時間”ともいわれるバージョンが存在していたことは取材で知っていた。少なくとも、榎戸耕史、黒沢清、河合美智子はこのラッシュを観ている。

相米は「翔んだカップル」で「ラブコールHIROKO*オリジナル版」(現在上映されるのはこれで“オリジナル版”と言われる)、「セーラー服と機関銃」で「完璧版」、「光る女」で「デラックス版」と、80年代の作家としては珍しくロング・バージョンを3つももっている(ディレクターズ・カットであったかは不明なので、そのようには書かない)。まるで、「タイタニック」や「アビス」の完全版を公開したジェームズ・キャメロンのようだ。

黒沢清は「『台風クラブ』も『ションベン・ライダー』もロング・バージョンが存在していれば、例えば、エドワード・ヤンの『クーリンチェ少年殺人事件』のような国際評価がもっとはやく広まっていたんではないか」と語る。『台風クラブ』については不明だが「ションベン・ライダー」に関して証言は残されており、榎戸監督が「燃やされた、あるいは、ジャンクされた」事実を語っている。この“ロング・バージョン”に関しては、自分の中のテーマとしては追いたいと思っているが、現在においては「ないものは、ない」のだ。

ポジティブに捉えると、『翔んだ』も『セーラー服』も『光る女』も元の短いバージョンのほうが個人的にはいいと思っている。公開当時コッポラの『地獄の黙示録』を観てわけがわからないけれど興奮し、後年「ディレクターズ・カット」を観たら実に普通の映画で、がっかりした記憶がある。

『翔んだ』について演出家の鴻上尚史はコラムで、元のバージョンのほうがよかったことを強く訴えていた。私もそう想う。

相米映画は、“喪失のプロセス”を見せることで成立している。それは、映画の俳優たちのテンションと同じように、繋がらないシークエンスがそのテンションだけで紡がれていく。その点では「台風クラブ」と「お引越し」はストーリーが繋がっているという意味で比較的よくできた映画であろう。

「ションベン・ライダー」と向き合うことはストーリーと向き合うことではない。繋がっていないがゆえに、その俳優そのものの運動を凝視するしかないのだ。一瞬一瞬を見逃さないこと。それを黒沢清監督は“スペクタル”と言った。

1983年に生まれたスペクタクル。それは40年後の2023年においても、現在である。


第2回 俳優映画祭

<第1夜>
「ションベン・ライダー」
ゲスト:榎戸耕史
2023年11月26日(日)
開場 18:30/開演 19:00
(ゲスト・トークMC 小林淳一(A PEOPLE編集長))

<第2夜>
「帰らざる日々」
ゲスト:江藤潤
2023年11月28日(火)
開場 18:30/開演 19:00
(ゲスト・トークMC:賀来タクト(映画評論家))

会場:武蔵野スイングホール
東京都武蔵野市境2-14-1スイングビル
武蔵境駅北口下車 西へ徒歩2分
料金 前売 一般2,000円 俳優1,500円
   ※当日 一般2,500円 俳優2,000円
ローソンチケットにて発売中

主催:パブリックアーツ
企画・運営:A PEOPLE CINEMA


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