ロウ・イエ監督の作家性、映像芸術家としての創造の秘密を、
まさに記憶に留めておきたい
最新作「サタデー・フィクション」。「シャドウプレイ」「ブラインド・マッサージ」「二重生活」「パリ、ただよう花」「スプリング・フィーバー」「天安門、恋人たち」「パープル・バタフライ」「ふたりの人魚」……。数々の問題作、数々の傑作を生んできた中国の巨匠。
本書は、日本ではロウ・イエ監督の初めての書籍。ロウ・イエ監督は5年前、日本の雑誌のインタビューでこう語っている。
「何か不幸な出来事が起きてしまった場合、それを忘れずに記憶に留めておくことが重要」
ロウ・イエ監督は、まさにそんな作品を撮り続けている。それは、単なる社会的な映画ではなく。テーマ主義に陥った人間ドラマでもなく。ロウ・イエ監督は、冷徹な時代の移り変わり、その残酷な運命の中で、力強く生きる人々の息遣いにも似た、愛と憎しみをリアルに描いていく。
映像だからできる表現、その圧倒的な映像美で。私たちは、ロウ・イエ監督の作家性、映像芸術家としての創造の秘密（私たちにとってもちろん幸福なことであります）を、まさに記憶に留めておきたいと願っている。
過去作ごとに行われたインタビューを採録。最新作「サタデー・フィクション」に合わせて行われた、ロウ・イエ自身が現在を語るオリジナルのロング・インタビューを掲載。脚本家のメイ・フォン、女優の鈴木杏との対談。プロデューサーのマー・インリーが書き下ろした「ふたりの人魚」から「サタデー・フィクション」、過去から現在までのその軌跡。そして、評論家、ライターによる全11作品の完全レビューをお届けする。
「作家主義 ロウ・イエ」のイントロダクション～ドキュメンタリー「夢の裏側」より
「検閲は映画のレイティングをはるかに超え、性描写や暴力のみならず、思想にも制約をかける。まさに典型的な検閲制度だ。言い換えれば検閲を通りかつ作家性を保てるなら基本的な人間性は破壊されてる。監督は解決策を考え問題に対処してすり抜け検閲を上手にごまかしどうにか通して興行にこぎつけていくー－ただ僕の想いとしては多くの人が携わり心血を注いだこの作品を無事に公開したい。僕が表現しようとしたあらゆる考えはすでに作品の中で明瞭に語っている。削除の痕跡が残る所も含め全てを観客に見てほしい」
作家主義 ロウ・イエ
発売日：2023年10月27日(金)、アマゾンほか一部書店にて発売
定価：2,420円（本体：2,200円+税10％）
発行：A PEOPLE
販売：ライスプレス