「殺人の追憶」に次ぐポン・ジュノとの顔合わせ。パク・ナミル役。
       漢江の怪物に姪っ子のヒョンソ(コ・アソン)が殺されたと聞き、合同慰霊場に現れるところで登場。酒瓶片手に遺影に近づき、家族一緒にのたうち回って大泣き。ヒョンソを助けなかったと、兄貴のカンドゥ(ソン・ガンホ)を罵倒して殴りかかる。
 髪はボサボサ、口の周りにはうっすらと無精ひげ。ちょっと汚く、やさぐれた雰囲気。スーツを着ているが、大卒のフリーターという役。
 この前年まで「菊花の香り~世界でいちばん愛されたひと~」「初恋のアルバム~人魚姫のいた島~」「天国まで60日」「恋愛の目的」と、ロマンス映画に出続けており、甘いマスクの彼を期待していた人にはちょっと残念な作品? 
 家族のことを報じるニュース映像を見て「なぜ俺だけ出ない(紹介されない)んだ?」と不平をつぶやく彼に対し、妹のアーチェリー競技の名手ナムジュ(ペ・ドゥナ)がこぼしたひと言が象徴的だ。いわく「だって特徴ないんだもん」。
 思えば、同じポン・ジュノとの「殺人の記憶」の容疑者もそんな印象だった。犯罪者顔というより、ただの田舎の兄ちゃん。でも、妙に印象に残る。存在感たっぷりのソン・ガンホと目立つ妹ペ・ドゥナの間にあって、この「特に取り柄もない次男坊」は難役だろう。それを飄々とやってのけるパク・ヘイルの才能をポン・ジュノはわかっている。 			
			
クライマックスでは火炎瓶を片手に、怪物を追撃。慰霊場で持っていた酒瓶がここにつながる。やはり、ポン・ジュノはパク・ヘイルのことをわかっている。
文:賀来タクト
  「グエムル 漢江の怪物」(2006)
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ/ピョン・ヒボン/パク・ヘイル/ペ・ドゥナ/コ・アソン
  
[関連記事]
パク・ヘイル × シン・ミナ「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」の軌跡
	
	パク・ヘイル 第1回「グエムル 漢江の怪物」
	パク・ヘイル 第2回「殺人の追憶」
	パク・ヘイル 第3回「菊花の香り 世界でいちばん愛されたひと」
	パク・ヘイル 第4回「初恋のアルバム 人魚姫のいた島」
	パク・ヘイル 第5回「モダンボーイ」
	パク・ヘイル 第6回「10億」
	パク・ヘイル 第7回「神弓 –KAMIYUMI-」
	パク・ヘイル 第8回「天命の城」
	
	シン・ミナ 第1回「火山高」
	シン・ミナ 第2回「美しき日々」
	シン・ミナ 第3回「甘い生活」
	シン・ミナ 第4回「Sad Movie〈サッド・ムービー〉」
	シン・ミナ 第5回「今、このままがいい」
	シン・ミナ 第6回「10億」
	シン・ミナ 第7回「キッチン ~3人のレシピ~」
	シン・ミナ 第8回「アラン使徒伝(サトデン)」
	
  A PEOPLE CINEMA第2弾「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」
  レビュー「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」
  「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」 A PEOPLE TALK LIVE
  PEOPLE / イ・ジュンドン
   PEOPLE / イ・ジュンドン ②
  PEOPLE / チャン・リュル
  チョン・ウンスク「慶州(キョンジュ)」映画紀行 第1回「慶州」という街
  チョン・ウンスク「慶州(キョンジュ)」映画紀行 第2回「慶州」という映画
  チョン・ウンスク「慶州(キョンジュ)」映画紀行 第3回 映画作家チャン・リュルが見た風景
  チョン・ウンスク「慶州(キョンジュ)」映画紀行 第4回 慶州にロケした映画たち
  「ホン・サンス、イ・チャンドン、そして、チャン・リュル」
  TOJI AIDA 「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」死者は、夢を見るのか?
  古家正亨特別寄稿